岡田武史の著書「勝利のチームメイク」

岡田武史の選手育成論

 先日日本代表監督に復帰した岡田武史監督ですが、日本での選手育成についてこのような持論をもっておられるようです。

 まず、日本人の子供の特徴として、ボールコントロールはとても上手く、これに関しては世界でもトップレベルといっています。しかし一方で、それをいつどのように使うのかが分かっていない、とのこと。日本人は学ぶことが好きで、教えるのが好きな分、自分で判断させるようなことが苦手、と指摘しているのです。

 これは岡田武史氏が横浜Fマリノスの監督をしていて、2003年、2004年とマリノスを優勝させて臨んだ2005年、2006年シーズンのこと。岡田氏は選手の岡田氏の戦術への信頼から、それがかえって選手の判断力を奪うことになってしまった・・・という反省から、選手自身が判断していく戦術への移行を試みたのです。しかし良い結果は出せず、結局、2006年シーズンの途中で、監督を辞任することになってしまったのです。

 当時、岡田氏は盛んに、「今季は俺は何も言わない」というようなことを繰り返して言っていたそうですが、すると選手の方は「どうすればいいのか分からない」と戸惑っていたのだとか。

 岡田氏はその上で、Jリーグクラブの選手育成の危険な一面を指摘しています。ユースの選手は練習漬けで、これでは友達とは遊べない、家族と一緒に食事もできない。人間として成長する一番重要な時期なのにこれは絶対によくない、という考えをもっているようですね。人とのコミュニケーションとか、サッカー以外にも沢山学ぶべきことはあるということを声高に叫ばれています。

 

岡田武史の著書「勝利のチームメイク」

 岡田武史さんといえば、何年か前に「勝利のチームメイク」という野球の古田敦也さん、ラグビーの平尾誠二さんとの対談形式の本を出されています。ただこれがちょっと特殊な対談方式でして、古田・平尾、平尾・岡田、岡田・古田と組み合わせを変えて3通りの対談が載っているんです。組み合わせによって話題を絞ったほうが良いと考えたのでしょうかね。

 この本を読んで感じることは、3人の頭の良さですね。監督、コーチ、捕手として必要なものとは・・・と問われた際によく挙げられる「コミュニケーション能力」が、皆さん非常に高いなと。具体的には、相手から話を引き出すこと、例え話を使って相手に理解させることが非常にうまいんです。また、修羅場での経験が豊富ですから説得力もあるんですよね。スポーツファンなら、そういえばそんなことあったなーと過去の名シーンを思い出したりしつつ、非常に興味深く読み進めることができると思います。2003年に発売された本なので若干話題が古くなってしまいますが・・・。

 これは岡田さんの話ですが、ある日Jリーグの試合で、ふとこちらをジーッと睨んでいる女性の視線を感じたんだそうです。後で聞けば、その女性はかつて代表から外された選手の奥さんだったとか。「監督とは孤独なもの。だから人間的に強くなるよ・・・」と、この本の発売から数年後、ヤクルトスワローズの監督に就任することになる古田さんに話す岡田さん。個人的に3人の話の中で特に引き込まれたのは岡田武史さんの話ですね。